展覧会キービジュ見ました。ウーティスをエスコートしたいんだが?

「あれがターゲットですね。行きましょう。管理人様」

 いつものように手が差し伸べられる。巣の有数の大富豪のパーティーの潜入調査。きらびやかに着飾った人たちに囲まれて、足が地につかない気分の私とは違ってウーティスはいつも通りだった。ちなみにふわふわした気分なのは何も上流階級の集まりに放り込まれたことだけが理由ではない。

「どうかなさいましたか?」

 彼女は肩を大きく露出した黒いドレスを身にまとっている。薄いヴェールのような布をかけてはいるけれど、それでも普段の姿から比べればかなり露出が激しくて……はっきりいって目のやり場に困る。それから、どうやらその自信満々な立ち姿と程よい色気が目をひくようで会場の男たちは暇さえあればウーティスに視線を送っている。――なんとなく、それが不愉快でたまらなかった。

 ウーティスの手を取ろうとしたところで一人の男が私とウーティスの間に割り込んだ。まるで私の姿なんて見えないとでも言いたげに。

〈ちょっと――ひどいんじゃない?〉
 と文句を言ってみるが、私を無視して男は話だした。

「美しい方、このパーティーは初めてですか? おっと、失礼――順番が逆になりましたね。私はこのパーティーの主催者です」
「主催者? 、、、そうでしたか。おかげさまで楽しい時間を過ごしています。それにしても、このように贅を尽くしたパーティーを開催するにはかなりの金がかかっているのでは? その噂を聞きつけていろいろな素性の人間が潜りこむだろうな」

 ウーティスは普段の雰囲気を少しだけ柔らかくして、指先のキスまでを恭しく受けてみせた。せっかくだから少しでも情報を搾り取ろうという魂胆らしい。

「何しろ退屈な人生ですからね。そのくらいの刺激があったほうが楽しいものですよ。それにしても、、、まさか、あなたのような気品のあるお方の耳にまで噂が届いているとは思いませんでしたが、、、どちらからいらしたんですか?」
 
 男の手がウーティスの肌をなぞり、露出した肩を撫でて、腰へと下りていく。

「パンツスタイルなのがもったいないですね。きっと美しい足をしているでしょうに。もしよければ、あとで私と二人きりで、、、」
 
 色欲にまみれた目線にウーティスの目尻がぴくりとひくついた。

〈ウーティス!〉

 気が付けば私は男を弾き飛ばして彼女の手を取っていた。当たり所がよかったのか、男は地面に尻もちをついていた。

「、、、、ああ、失礼。趣味の悪い置時計か何かかと思っておりましたが――お連れの方でしたか?」
〈趣味が悪くて悪かったね。あなたも見たところ私とどっこいどっこいだと思うけどね? ウーティス、大丈夫?〉
「管理、、、ダンテ様。この程度の侮辱、私は、、、」

 その顔には困惑と安堵の色が浮かんでいた。

〈あなたが構わなくても私が嫌なんだよね。たしかに、情報は得られるかもしれないけど、少しでも嫌な思いをするんだったらこんなことする必要ないよ〉
「しかし、、、作戦の成功確率を高めるためにも、、、」
〈ううん。私は誰かの犠牲を前提にした作戦はたてないよ〉

 はっきりと断言する。ウーティスは一瞬息をのんで、気が緩んだような柔らかい表情をうかべた。頬はほんのりと朱を帯びる。
 ホールにはざわめきが広がって、誰かが警備員を呼ぶ声が聞こえた。だけど、もう肩を小さくしているわけにはいかなかった。

〈エスコートしてもいいかな。作法を知ってるわけじゃないけれど、きっとここにいる連中よりはマシだと思うから〉
「最初からそのつもりでした」

 ようやく手にとったウーティスの指は熱く、私の手も溶けてしまいそうだった。